僕の世界の半分で
小さい頃から変わらない距離感の僕たち。
この歳にもなると、抱きつかれながら至近距離で天使の笑顔を向けられると、平常を保つのに必死っていうのが本音ではある。
そんな僕の気持ちなど知るよしもない彼女は、抱き着いたまま僕から離れようとはしない。
「ましゃ、おはよーございます?」
そう言って首を傾け、うふふと、また可愛らしく笑う。
…あーあ。
本当に可愛い、可愛い。罪深い。
ゆんを知らない男が…というか、僕じゃなかったら、この状況は確実にアウトだ。
彼女が僕と家族以外に抱きつくようなことはしないと思うけれど、それでも時々心配でたまらなくなる。
ゆんだってちゃんと人を選んでいるーーというか、そう教えられているはずだ。
“抱き着いてもいい人”は、ゆんのことをちゃんと知っていて、距離感が分かる人だけ。
朝陽と晴陽も対象内だけど、あんまり2人とゆんが抱き合っているのは見たことがない。
と、言うのも、ゆんの母親――菊花(きっか)ちゃん曰く、昔から双子よりと僕と2人でいる時間が多かったから、家族として認識しているのかもしれない、とのことだった。
素直にうれしいことだ。
ゆんのパーソナルスペースに入れてもらえているのだから。