僕の世界の半分で
「こら結花(ゆいか)、雅翔から離れなさい」
「しゃしん」
「ママの準備が終わるまで待って」
「なんじですか」
「あと5分。雅翔、上がって」
「あ、うん」
「ましゃ、ごふん まちます!」
「うん、わかったから、結花。雅翔から離れて、ほら」
「きゃはっ、ましゃ、ましゃっ」
菊花ちゃんが、きゃっきゃと笑うゆんを僕から引き剥がす。
ゆんはどうやら僕にくっつくのが好きなようなのだ。
それが“家族”の括りなのかはわからないけど、と、これもいつかの菊花ちゃんが言っていた。
「結花の学校の連絡帳とか色々書くのが終わってなくてさ。ごめん、写真はちょっと待ってもらえる?」
菊花ちゃんは椅子に腰を下ろし、テーブルに置いてある『連絡帳』と書かれた大きなファイルを開いた。
連絡帳は菊花ちゃんの毎朝の日課だ。
毎日、ゆんの体調とか前日の出来事とかを記録しているノート。
ゆんの通う学校は中学からの持ちあがりだから、高校生になっても連絡帳は継続されているらしい。