僕の世界の半分で
「ま、待ってゆん、それ恥ずかしい」
「しゃしん とります」
「いや、うん、撮るから、そんな見返さないで」
何が恥ずかしいって言われるとよくわからない。
けれど、目の前で自分とトーク画面をみられるのはどこか落ち着かないというか、…とにかく恥ずかしかった。
僕がそう言えば、ゆんはすんなりスマホを閉じてくれた。ほっと胸をなでおろす。
「てか、ゆんたちも今日、朝陽たちんとこ来るんだったよね」
「そうよー。葉子ちゃんとまゆちゃんとランチもする」
「ああ。母さんから聞いた」
「そうそう。…よしっ、オッケー!お待たせ2人とも」
「しゃしん!」
「うん、写真。はい二人とも外出てー」
滞在時間は5分足らずだった。
僕が菊花ちゃんと話している間に靴下を履いたらしいゆん。新しい制服を着た彼女に腕を引っ張られ、急かされるように靴を履く。
「ましゃ、はやく」
「わ、ゆん、急かさないで」
「準備できた?とるよー」
彼女の家の表札のところに2人で肩を並べ、菊花ちゃんの構えるカメラを見る。
僕の隣で満面の笑みを浮かべてピースをするゆんに、口元は無意識に緩んでいた。
ゆんといると必然と笑顔が増えるのは、きっと彼女だけが使える魔法だ。