僕の世界の半分で
中学1年生の時、初めて彼女ができた。
『私、渡来くんのことが好き』
その子の名前は、その時初めて知った。
今まで話した回数は、多分片手で数えきれるほど。僕のどこを見て、何を知って好きだと言っているのかわからなかった。
中学生になって、周りの友達に彼氏彼女ができ始めていたからだろうか。
流行りに乗りたかったのか。
だとしたらかなりくだらない。
彼女がどれほど僕に対してまっすぐな気持ちを抱いているかなんて知る由もなかった僕は、告白を聞きながら、心の中でそんな最低なことを思っていた。
『彼女、いないよね?好きな人もいるように見えないし』
彼女はいない。けれど、好きな人はいる。
当時、晴陽と朝陽とは同じクラスで、僕は毎日2人とつるんでいたから、彼ら以外で“超”が付くほど仲の良い人はいなかった。
友達がたくさん欲しかったわけでもなかったので、クラスメイト全員の名前を言える自信などなかった。
ましてや ゆん以外の女の子とまともに会話をしたのはいつぶりだっただろうか。
これが同い年の女の子の“普通”なのかと思ったら、なんだかめんどくさいなと思った。