僕の世界の半分で
美術部は、その名を借りた帰宅部だった。
必ずどこかの部活に所属しなければならないのこの学校の決まりだ。所属部員は意外と多いものの、半数以上が幽霊部員。
バイトや青春活動に明け暮れる人たちのための部活と言っても過言ではなかった。
もともと絵は好きだった。
壱くんは小さい時からアトリエを習っていて、彼のアートな才能をそばで見てきた影響もあるのかもしれない。
壱くんの創り出す世界は、言葉じゃ表せないくらい、綺麗で儚くて美しいのだ。
美術が、というよりも、僕は壱くんの世界が好きだった。
けれど、美術部に入部して、僕の世界はこれまでとは違う色に変わった。
まともに活動している数少ない部員たちと話すようになり、見ているだけではわからなかったアートの魅力を知った。
もともと周りからは器用だと言われることが多かった僕は、教えてもらったことをどんどん吸収して自分のものにしていき、“僕の世界”を創るようになった。
その時間は、まるでその世界には僕しかいないような感覚になった
何も考えず、思い描いたままに頭の中を形にしていく。それが、僕は好きだった。