僕の世界の半分で





「…雅翔くんといると楽しいんだ、私」



彼女――浅木 雪〈あさぎ ゆき〉先輩は、まともに部活をしているうちのひとりで、よく話をする先輩だった。


仲良しというには図々しいかもしれないけれど、幽霊部員が多いこの部活でまともに活動をしている貴重な存在同士なので、そのなかでは比較的“仲良し”な方だと思う。



何もわからず、教えられたことを活かして絵を描く僕と違って、彼女の作り出す世界は、今まで見たことのない異次元のものだった。


壱くんとも違う、独特な世界。
彼女の絵は、まるでひとつの物語のようだ。



初めて見た時のあの感覚を、僕はずっと忘れられない。



コンテストにも多く出展していて、この世界では羨ましがられるような素晴らしい賞をいくつももらっているような人。


絵を抜きにしても、彼女は魅力が詰まった人だ。

気さくで、優しくて、「うふふ」と、上品に柔らかく笑う。ちなみに、あたりまえに美人。



美術部員の中ではーーいや、部活外でも、彼女はどう見ても人気者だった。



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