僕の世界の半分で
「…、あの、先輩」
「ふふ、なんか、ドキドキしちゃうな」
思わず、「え…」と声を洩らす。
口元に手を当てて浅木先輩が笑う。
少しだけ不安の色を纏った苦笑いだった。
初めて見る、彼女の表情。
「雅翔くん、私になにか話さなくちゃいけないことがあるのかな」
「…、どうして」
「表情硬いし、なんか緊張してるみたいだから。…へへ、別れ話だったら、聞きたくないなぁ…」
カラカラ…と音を立てて氷を回した先輩は、伏し目がちに、ずっとアイスティーを見つめている。
…僕の緊張はそんなに顔に出てしまっていたのか。
変に不安を与えてしまったかもしれない。
別れ話はしない。けれど、先輩次第では結果的にそうなってしまう可能性もある。
そうなったら受け入れる。覚悟はできている。
──それでもきみに、僕の世界を知ってもらいたかった。