僕の世界の半分で
全部伝えて、再びレモネードを飲む。氷は溶け始めていて、レモンの酸味が少しだけ弱くなっていた。
「…大切なんだね、その子のこと」
少しの沈黙の後、彼女がゆっくり口を開いた。
視線が交わる。彼女がふわりと微笑んだ。
その表情がひどく綺麗で、優しくて、どうしようもなく泣きたくなってしまう
「…雅翔くんの“普通”かぁ」
「…はい」
「その子がいてこそ、今の雅翔くんがいるんだよね」
その言葉に小さく頷く。彼女は息を吐くと、「雅翔くん」と、優しい声で僕の名前を呼んだ。
「私がどうしてきみのことを好きになったか、わかる?」
「…俺といるのは楽しいって、」
「それはもちろんそうなんだけどね、それ以外の理由があるの」
――先輩が僕を好きな理由。
告白された時に「雅翔くんと居ると楽しい」と言われたことがある。
けれどそれっきり、具体的にどこが好きなのかは聞いたことがなかった。
少しだけ鼓動が早くなる。
自分が好かれている理由を聞くことがこんなにドキドキするなんて知らなかった。
テーブルの上でぎゅっと両手を握りしめ、次の言葉を待つ。