僕の世界の半分で
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「彼女、いい子だよな」
「…うん。ほんと…壱くんありがとう」
「俺はなんもしてねえよ」
壱くんが背中を押してくれたおかげだ。
あの日の壱くんの言葉がなかったら、僕は今でもずっと正解がわからないまま悩み続けていたかもしれない。
“ありがとう”にたくさんの思いを乗せて伝えると、彼は「ん」と優しい笑みを浮かべた。
「なんかあったら言えよ。俺はずっと、お前の味方だから」
壱くんの言葉は、いつだって僕にとっての魔法。
ゆんと居ると自然と笑みがこぼれてしまうのも、彼女が使える魔法。
この兄弟は、昔から僕にとって魔法使いだ。
「早く買って帰ろう」
壱くんの言葉に頷いて、足を速める。
「本当あの双子俺の扱い雑なんだけど。壱くんもそう思わない?」
「お前の優しさに甘えてんだろ。お前が本気でキレたりしたら朝陽とか泣くんじゃねーの」
「…そうかな」
「面白そうだから今度やってみてよ」
「やだよ」
そんな会話をしながら歩くのは、冬のある日のことだった。