紅の華_


「北高…か。」


男の人が人差し指と親指で摘むように掴んでいるそれは、紛れもなく私の生徒手帳だった。


「…見ないでください。」


生徒手帳は名前も生年月日も、何も分からないくらいに落書きがしてある。

そんなの、いくら知らない人とはいえ見られるのは恥ずかしいし嫌だ。




「ねぇ」


生徒手帳を鞄の中に直していると、すぐ側で声が聞こえた気がした。



「…っな、んですか…?」


それもそのはず。
男の人は、私の隣にいたから。




< 11 / 225 >

この作品をシェア

pagetop