紅の華_
「北高…か。」
男の人が人差し指と親指で摘むように掴んでいるそれは、紛れもなく私の生徒手帳だった。
「…見ないでください。」
生徒手帳は名前も生年月日も、何も分からないくらいに落書きがしてある。
そんなの、いくら知らない人とはいえ見られるのは恥ずかしいし嫌だ。
「ねぇ」
生徒手帳を鞄の中に直していると、すぐ側で声が聞こえた気がした。
「…っな、んですか…?」
それもそのはず。
男の人は、私の隣にいたから。