紅の華_
「芽依、来るな!!」
嫌……
「頼む……芽依、逃げろ…っ!!」
嫌………こんなの、絶対に………
「蓮…っ」
気がつけば走り出していた。
目を瞑ったまま一言も喋らない彼の元へ。
止める彼も、その彼に殴りかかろうとしている男の存在すらも忘れて、無我夢中で。
「蓮…!蓮!」
嫌に響く声が不安を掻き立てる。
蓮に触れる度に冷たい、赤いモノがつく。
「芽依!……っ何してんだよこのバカ兄貴…」
心底悔しそうな声が頭に入ってくる。
「は…は……ご、めん……」
いつものようにヘラヘラ笑いながら謝るのも精一杯みたいで、見ているこっちが辛くなる。