紅の華_
それから何が起きたのか、言葉でなんて説明できなかった。
ただ、どうして目覚めたのか。
どうして無傷なのか。
───どうして、蓮が居ないのか。
「…芽依」
目の下のクマも、目の腫れも酷い藍がそこには座っていて。
「れ…ん、は…?」
しばらく喋っていなかったのか、私もあの時の蓮のように声が掠れていた。
………あの時の、蓮のように。
“───本当に愛してた。”
「…あいつは、兄貴は…」
「いや………」
「芽依、落ち着いて。聞いて」
「やだ………」
頭の中でぐるぐると巡る記憶。
初めてあった日、蓮の笑顔、好きだと伝えた時の傷ついた顔、
「愛してた」と言った時の、幸せそうな顔────。
◆◇◆