紅の華_


「…ごめん、芽依も辛いのに。」


倉庫を出てから少しして、黙っていた藍が口を開いた。


…と思ったらそんな言葉で、私は歩みを止める。





「“ごめん”はもういらないよ?」


記憶が戻ってから、何度も何度も謝られた。

その度にどこかモヤモヤしていたのは、きっとそれが私の欲していた言葉じゃなかったから。







「ごめ……いや、ありがとう。」

「どういたしまして。」



言いかけたのは聞かなかったことにして、一先ず胸につっかえていたものが取れた気がする。




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