紅の華_


…憎い相手のはずだった。

いや、今だって憎いのに変わりない。





でも────



「…どうして、泣きそうなの」


人を憎んで憎んで、復讐を選んだ貴方が。



包帯だらけの顔の奥が、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているのかが分からない。



「泣きそう?…はっ、笑わせんな。」


そう言った後パイプ椅子から立ち上がり、私に馬乗りになってナイフを顔スレスレに刺した。


それがまるで“決意”にも取れた私は、今は何故かその行為を怖いとも思わなかった。













だってこの人は弱いから。

本当は、誰よりも。





< 184 / 225 >

この作品をシェア

pagetop