紅の華_
…憎い相手のはずだった。
いや、今だって憎いのに変わりない。
でも────
「…どうして、泣きそうなの」
人を憎んで憎んで、復讐を選んだ貴方が。
包帯だらけの顔の奥が、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているのかが分からない。
「泣きそう?…はっ、笑わせんな。」
そう言った後パイプ椅子から立ち上がり、私に馬乗りになってナイフを顔スレスレに刺した。
それがまるで“決意”にも取れた私は、今は何故かその行為を怖いとも思わなかった。
だってこの人は弱いから。
本当は、誰よりも。