紅の華_
「…兄貴も、芽依も……馬鹿だ…。」
心底呆れたように、吐息とともに藍はそう言った。
「…ごめん、ね…」
少し笑って言うと、私の頬に雫が落ちてくる。
「絶対助ける……助かる、からっ……」
前髪の隙間から見える藍の目元は光っていて、肩も震えていた。
「もう……置いてかないで…」
小さい子供のように見えた。
私を抱きしめ、またあの日のように縋るような目だった。
「……置いてかないよ。」
最愛の兄を失って、失うということを恐れているのは藍。
いつだって1人を怖がっているのも藍。
「だから、待ってて…?」
そんな藍を置いては行けない。
きっと戻ってくる。
だからそれまでは──────
「もう、泣かないでね…」