世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
ディアルは後ろを振り返りアリシアの暮らしているボロボロの小屋を見つめて、
「あの小屋は君が造ったのか?」
「はい、私が造りました」
「不便ではないのか?」
アリシアは少し考えて言った。
「不便かと聞かれれば不便です、ただ雨風を凌ぐことはできます・・・それに私にはここの居心地がいいのです」
「ここの居心地がいい?」
ディアルは信じられないっといった感じで聞き返した。どう見ても居心地がいいとは思えない。雨風を凌げるからというが、街で暮らすほうが断然に便利で建物だってまともだ。ここの良さなどこの湖が綺麗な所だけじゃないのか。
アリシアは湖を一点に見つめて、「はい」とだけ答えた。その横顔は寂しさを押し殺して感情に蓋をしたようにしかディアルには見えなかった。

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