世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
アリシアは湖を見つめて言った。
「はい、本当に綺麗です。水面に映るこの景色はとても幻想的です。もう少ししたら木々たちから葉が舞い散るんです。そのまだら模様の水面も私は好きです」
臆面もなく好きと言ったアリシアにディアルは驚いた。無感情だと思っていた少女にもちゃんと感情があるじゃないか、当たり前のことか。
「君のような子と見ると、また格別に美しい」
言った後になってディアルは恥ずかしくなった。
「私のような?」
ディアルの言葉を上手く受け止められないアリシアは聞き返す。
「君のように美しい女の子という意味さ」
娼婦には似たような事を何度も言ってきたが、ディアルは恥ずかしい気持ちになり、アリシアの表情を確認することができない。
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