世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
 ルルの想いは次第に強くなり、何かと理由を見つけてはアリシアに構ってもらおうとするようになっていた。周囲の人間はそんな王子を見て、まるで赤子の駄々と揶揄するようになる。ルルの耳にそんな事は一切入ってくるはずもなく、わざと擦り傷をつけてはアリシアに治療を頼む。アリシアは毎回困ったような顔をするも王子の頼みを断るわけにもいかなかった。
そのようなことが毎日続くとウェルビンも放っておくわけにもいかず、アリシアをルルから遠ざけるようになった。どうやっても実ることはない恋。王子にとっては夢を掴むのと同じ。身分の壁を超えることはできないのだから。
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