世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。

「ヒールが何の役に立つんだよ、火力で押し切ればいいんだよ」
「報酬の六割要求するんだろ、欲張りすぎだろ」
「何でも親代わりの人を見殺しにしたんでしょ？」
「もし私が負傷してもヒールをもらえないとかあったら嫌だわ」
ギルド会館でアリシアを見かけた冒険者達が口々にアリシアの悪口を言う。

アリシアは意にも介さない様子でポーションをギルド会館の受付嬢のサーシャに手渡した。

悪口はサーシャにも聞こえていて、美しい顔立ちが眉を寄せて吊り上がっているようにみえる。サーシャはアリシアから箱に入ったポーションを受け取り報酬をアリシアに渡す。
「ごめんね、アリシア。気にしないでね、ただの僻みなんだから」
「いえ、気にしてません・・・事実ですから」
無表情でアリシアは答える。