世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
 エルザは辺りを見回す。絶望的な観測の中で淡い期待をもって。
「私の他には誰もいないのか?」
エルザは仲間の安否を確認する。もしかしたらという願い。目の前で四肢を食いちぎられた姿をみていたにも関わらず。

アリシアは質問の意図が汲み取れないで押し黙る。その姿を見たエルザは希望を捨てた。
「すまなかった」
何人も住めるような造りをしていない部屋で何を言っているんだろうか、希望とは願望と変わらないものだとエルザは痛感した。胸が痛い。苦しい。一人だけ生き残ったことに罪悪感を感じるエルザ。

「・・・」
何があったんだろうかと心配するアリシアの視線をエルザは感じる。着ている甲冑も衣服もボロボロ。これで強がって見せても滑稽だろう。エルザは上体を起こして、
「魔物の群れにやられたんだ、私以外は皆死んだ・・・」
信じられないといった表情をアリシアは浮かべる。
「エルザがいたのにですか?」
私がいた。アリシアのエルザがいた。いう言葉は心に辛辣に響いた。エルザには簡単な依頼のはずだった。仲間は私がいれば大丈夫だろうと思っていたに違いない。
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