世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
期待。勝手に期待される。下手に力を持っているから。アリシアもそうだったんだな。力を持って産まれた為に羨望と期待を一身に受ける。

私は今、凄く恐い。これから仲間の家族に会うのがたまらなく恐い。依頼を失敗したことを告げるのが恐い。この感情が身勝手な保身だということも分かっている。エルザは両手で顔を覆った。何も考えたくない。何も見たくない。何も聞きたくない。

 アリシアにエルザを責める意思など毛頭なかった。純粋にエルザの力を評価しての発言だった。王国一番の魔法使いで、ウェルビン仕込みの剣の使い手として、アリシアは実力を認めている。そのエルザがボロボロになるような直面に会うことが想像できないででた言葉だった。

 
ただし、エルザはそうとは受け止めることができなかった。アリシアの言葉を責めているように捉えてしまったのだった。顔を覆うエルザを見て、アリシアは自分の放った言葉がエルザを追い詰めるものだと気づいた。
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