前世で生き別れた夫と、来世で再び会いました。
 ───怖い。

 鳴りを潜めていた恐怖心が、まざまざと蘇る。

「嫌だッ…!!」

「嫌と言われても離さねぇよ」

 そしてグイグイと引っ張られるようにして、階段を降りた。



 連れてこられたのは、旧校舎。

 十数年前から使われずにいて、今はオンボロのクモの巣だらけだ。

 ここには先生も来ないため、何をしてもバレないという。

「察しが良けりゃあ、俺が何したいかは分かるよなぁ?」

 その声も、私にはほとんど届いていない。

 私の頭には、どうやってこの窮地(きゅうち)(だっ)するか…それしかなかった。

 手を振り払おうとも、力で私が勝てるはずがない。

 万一、振り解けたとしても…きっと再び、強い力で掴まれるか、軽い暴力を振るわれて終わりだろう。

< 22 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop