夜になる前にわたしを照らしてくれたいちばん星は君でした。
「落ち着いた?」


「……うん」


また泣き腫らしてしまったわたしの目を見て笑った水城くんの笑顔はいつもよりずっと優しくて、なんだか水城くんが神様みたいに見えてきた。


「ありがとう」


「うん。もう織原さんにちょっかい出すなって瑠璃に言っとくよ」


気がついたらオレンジ色の太陽がわたしたちを見守っていて、わたしがどれだけ泣いていたかを知って今さらになって恥ずかしくなった。


「そろそろ帰ろうか」


「うん」


わたしが岩から飛び降りると、「ねえ」という水城くんの声に呼び止められる。


振り返ると、夕日に照らされて顔を赤く染めた水城くんがわたしを見下ろしていた。


「俺、これから花凪って呼ぶから。その……俺のことも名前で呼んでくれないかな」


少し照れくさそうに目線を泳がせる水城くんの顔が赤いのは、夕日のせいだけじゃないみたい。


「分かった」


そう言ったわたしの顔も、きっと赤いから。
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