夜になる前にわたしを照らしてくれたいちばん星は君でした。
「どうし……」


「嫌っ! 触んないで!」


わたしは、またわたしに触れようとした水城くんが怖くて、彼からも逃げようとしてしまっていた。


なんで、水城くんまで怖いんだろう。


ああ、もう……わかんないや。


パニックになった私は、何度も水城くんの手を振り払ってしまった。


「落ち着いて!」


水城くんは暴れるわたしをなだめようとするけど、わたしは泣きながら叫んでいた。


「……っ、あんたみたいに幸せに生きてきた奴には分かんないよ! わたしのこんな気持ち!」


水城くんは、手足をめちゃくちゃに動かして逃げようとするわたしの肩を無理やり掴んで、そのまま私が動く前にわたしを押さえつけた。


「……っ!?」


水城くんはわたしの目を見つめたまま、右手をわたしの頬に添えて顔を近づけた。


な、何してるの……?


海水で少し濡れた、柔らかい水城くんの前髪がわたしの顔に当たって視界が暗くなった時、わたしは身動きが取れなくなった。


唇に、暖かくて柔らかい彼の唇が触れたから。


何も考えられなくなって、今置かれた状況が一瞬理解できなかった。
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