夜になる前にわたしを照らしてくれたいちばん星は君でした。
ここはとても静かで、つい1週間前までいた雑音で溢れた都会と同じ国の中にあるなんて思えないくらいだ。


聞こえてくるのは、波の音と鳥の声くらい。


ザザー。


規則的に聞こえる音が心地良い。




「海っていいよな」


しばらくの沈黙の後、唐突に水城くんが口を開いた。


「いつ見ても同じ表情の時なんかなくて。お前、こんな表情もするのかって思うこともあるしさ」


「…………」


優しい風が吹いてきて、わたしたちの髪がゆっくりとなびいた。
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