夜になる前にわたしを照らしてくれたいちばん星は君でした。
目が覚めると、涙が頬で乾いていた。


眠りにつく前とは景色が違う。


なんでだろうと一瞬考えて、そうだ、引っ越してきたんだと思い出す。


嫌な夢を見た。


1番思い出したくない、辛い記憶。


頭が痛くなって下を向くと、左手の手首の傷痕が目に入ってきた。


「…………」


無数にある、刃物で切った痕のくっきり残っている線。


それを見つめているといつまでもあの辛い日々に囚われてしまうようで、ファンデーションで隠した。


誰にも見つからないように。


水城くんにだけは、とくに見つかりたくないな……。


そう思ってしまうのは、心が綺麗な水城くんだからだろうか。
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