有 料 彼 氏
「やばそうじゃない?」
「大丈夫だと思うけど……」
あたしに向かって小さく首をかしげ、さわりたくないのかな、でも気にしてるよね、とわかりやすく表情に出す彼女。
恐る恐る手に持つと、分厚さのわりに軽くて拍子抜けした。
「それ、昨日はなかったよね?」
顔を顰めたのは朋実。本を投げ捨てようとしたのがあたし。口を開いたのは──瑠々子。
「なかったけど……ほかのところから、出したんじゃないかな」
「埃被ってたんじゃないの?」
「棚から出して床に置いて、棚をはたいたら埃が落ちた……とか」
それで本はしまい忘れたってこと?朋実がたずねる。
1冊だけ?あたしが眉を寄せる。
瑠々子に難癖つけたかったわけではない。ただ、すべての恐怖を払拭したかっただけだ。
「うーん」
朋実が声をあげた。こういう、考えているときに沈黙をしない彼女がすきだ。