有 料 彼 氏


「わたし、借りようかな」


瑠々子の言葉に目を見開いたのは、そんな彼女とお揃いだった。


「なんで?」

「ここに置きっぱなしにはできないでしょ?」

「すればいいじゃん、そうだったんだし」

「でも……本が可哀想だよ」

「じゃあ」


ふたりのやりとりに、大声を出して首をつっこむ。


「あたしが借りるよ」


瑠々子が笑った。なんでか知らないけれど、馬鹿にするような笑みだった。そんなことはないはず、でも、怖がりだと思われたくないあたしの意地っ張りが見せたのだ。


意地っ張りのあたしは、そう見たのだ。


瑠々子の言葉に、司書さんに渡せばいいじゃない、そう言えばよかったのに。


変なの。


あたしが借りるよ、それ以外は言えなかった。


「……じゃあ、ゆずちゃんにお願いしようかな」


瑠々子の声に、ひどく安心した。これで少なくとも、同じ土俵だ。


「任せてよ」


朋実が枝毛を探していた。

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