センチメンタル・ジャーニー Ⅱ ~俺が本当に守りたい人

俺は 所長室のドアを ノックした。

「失礼します。」


俺の顔を見た 所長は 

五月女さんと同じ 表情をした。


「あれ。工藤君 町田さんと 一緒じゃないの?」

「はい…今 聞いて…町田さん 何て言ってましたか?」

「えっ。工藤君 町田さんが休むこと 聞いてないの?」

「はい。昨日…ちょっと すれ違いがあって。葉月と 連絡つかなくて。」

「すれ違い?喧嘩でもしたの?どれ。俺が 電話してみようか?」


楽観的な笑顔で 俺を見る所長は

デスクの 受話器を 取り上げる。 


「おかしいなぁ。電源が入ってないって。町田さん 責任感強いから。事務所の電話に 出ないことなんて ないのに。」


俺も もう一度 自分のスマホから 

葉月に 電話を掛けたけど…


電源が入っていないって アナウンスされ。


「所長。葉月 一週間 休むって言ったんですか?」

「そうだよ。昨夜 6時過ぎに 電話があって。息抜きだって言うから。てっきり 工藤君と どこかへ 行くのかと思ったんだ。随分 急だけど。まあ 町田さん いつも 頑張ってくれたから。たまにはいいかと思って。ゆっくり 休んでいいよって 言ったんだよ。」


6時過ぎって… 俺が カンナの所に 向かってすぐ。


葉月は 俺を 送り出してすぐに

どこかへ 行ってしまったのか…


俺の 慌てた表情に 

所長も ただ事ではないと 思ったのか。

所長室を 出て 川村さんを 呼んだ。


「川村さん 町田さんのこと 何か聞いてる?」

「何かって?なんでしょう?」

「今日から 休むこと。」

「いいえ。私も 急で驚いていたんです。先週は そんな話し 何もしてなかったから。」


葉月の 教育係だった 川村さんは

事務所の中で 葉月と一番 親しかった。


不審気に 俺の顔を見る 川村さん。


「工藤さん 何かあったの?」


何も言えずに 俺は 顔を伏せた。





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