【web版】好きでいてもいいですか?-ひきこもり令嬢に購入された奴隷の話-(コミカライズタイトル:ひきこもり令嬢は購入した奴隷に溺愛される)
「おい、行き先決まったぞ」
店の主人が下卑た顔でオレに笑いかけた。オレもそれに笑って答える。
「へぇ? 昨日、顔見に来たマダム? それともおとといのご令嬢?」
お客は、未亡人はもちろんだが、未婚で処女の令嬢もいる。
この国では、二十五歳までに異性と交わらなければ、手の甲に賢者の印が浮き出てくるのだ。と同時に、一般人の持たない不思議な力を手にいれることができる。
癒しの能力だったり、ずば抜けた記憶力だったり。性格的にも達観し、穏やかになってゆく。彼らは、賢者・聖女と呼ばれ、宮廷や学校、教会や病院などで、教育や政治、治癒などにまつわる仕事に就くのが常識だ。それは高貴で尊敬を集める職業でもあった。
だからこそ、その仕事に憧れるものも多く、あえて禁欲をし、その力を手に入れるものも多い。ただし、手の甲に賢者の印を持つものは、俗世とは縁を切り、家族をもてないことが決まりとなっていた。