【web版】好きでいてもいいですか?-ひきこもり令嬢に購入された奴隷の話-(コミカライズタイトル:ひきこもり令嬢は購入した奴隷に溺愛される)

「こちらへ」

 低く清んだ声は、嫌悪でオレを突き刺してくるようだ。少なくとも、オレが欲しくて手に入れたというような、こびるような声ではないから薄ら寒い。
 オレは黙って愛想笑いを振りまいて、店の裏に付けられた馬車に乗り込んだ。黒い馬車はシンプルだが上質だ。家紋の装飾などはない。

 門をくぐり、長いこと中庭を走りたどり着いたエントランス。広々とした緑の庭は、手入れの行き届いた芝で開けている。建物の周りには色とりどりの薔薇が咲き誇る。
 重厚で対称的なレンガ造りの大きなお屋敷。白いアーチと窓の枠が、煉瓦のオレンジに映えて美しい。
 性奴隷を飼う様な淫靡な雰囲気は微塵もない。まっとうな健全さで拍子抜けする。
 もう少しオドロオドロシイ郊外の別宅にでも連れ去られて、地下牢にでも押し込まれるのかと思ったら、そうではないらしい。

 恐る恐る促されるままに老紳士へ付いていく。
 明るい広間(サルーン)には、大きな花瓶に新鮮な花が飾られている。派手ではないが優雅だ。
 何が目的なのか見当もつかない。
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