気がついたら好きだった
「なんで、あなたがここに居るの?」
そう聞かれた。
そっくりそのままお返ししたかった。
「えっと、買い物を頼まれて...」
唯斗君との関係性をどうやって誤魔化そうか考えながら答えた。
「買い物?患者のあなたが唯斗に頼まれたの?」
「えっと、兄が相沢先生と仲良くて、私は、全然なんですけど、むしろ嫌いで....それで、兄が頼まれたのを私が仕方なく....兄が、今日忙しくて、それで」
「ふーん、じゃあ、私が渡しとくから、あなた帰っていいわよ?」
「えっ、あー、分かりました」
そう言って買い物袋を渡し、伊藤さんに背を向けると
「茄子?伊吹さん、知らないの?唯斗って、茄子嫌いなんだよ?」
「えっ?」
「この茄子だけ持って帰ってね?」
「あっ、分かりました」
そう言って、私は、伊藤さんのもとを離れた。