気がついたら好きだった
仕方なく誰もいない家にトボトボと帰宅した。

持ち帰った茄子で、麻婆でも作ろうかと、キッチンに立つと、携帯がなった。

「もしもし?」

「もしもし」

「今どこ?」
少し心配そうな声で唯斗君がそう聞いた。

「家」

「誰の?」

「自分の」

「なんで?」

「帰っていいわよって言われたから」

「誰に?」

「伊藤さんに」

「ふーん」

「.....」

「それで居ないんだ、へー…」

「は?なにそれ⁈
私なんかより、伊藤さんに最初からご飯頼めば良かったでしょ?」

「うん、そうだな、じゃあな!あっ、合い鍵」

「え?」

「合い鍵、返しに今すぐ来て!」

「そっちが取りに来ればいいでしょ?」

「凛なに?その口の聞き方?」

「.....」

「凛?鍵、今すぐに返しに来てくれるよな?
俺の言うことは絶対だからな?いいな?」


そう言うと、電話が切れた。


唯斗君は、ずるい。
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