溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
侑斗と気持ちをたしかめ合い、初めて抱かれた翌日。
梨乃は侑斗の「一緒に出るぞ」のひと言で渋々侑斗とともに出勤した。
昨夜散々抱かれたとはいっても、梨乃はまだ自分が侑斗の婚約者だと完全に自覚できていない。
冷静に考えればお互いの家族になにも伝えていないどころか交際期間ゼロで婚約者に昇格。
職場に向かう電車の中でも車窓からの景色をぼんやりと眺めていた。
昨夜侑斗から与えられた体の深い場所に残る痛み。
電車が揺れるたびに感じるその鈍い感覚だけが、がらりと変わった梨乃の立場を教えてくれる。
「あの、やっぱり一緒に出勤というのはまずいと思うんですけど」
梨乃は混み合う車内で隣に立つ侑斗を見上げた。
「どうしてまずいんだ?」
「どうしてって、写真が拡散しただけで注目されたんですよ。一緒に出勤なんてしたらどうなるか……侑斗さんは白石家の人だから慣れてるでしょうけど、私みたいな一般従業員には恐怖でしかないです」