溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「侑斗さん、せめて手は離してください。ほら、みんなびっくりしてます」
ホテルの敷地内、それも大勢の宿泊客が行きかう正面玄関やロビーでも侑斗は梨乃の手を離さず颯爽と歩いている。
「こういうことにもいずれ慣れる。なんといっても白石家の嫁になるんだから気にするな」
「あ、あの、そんな大きな声で言わないでください」
いきなり白石家の嫁だと言われ、梨乃は青ざめた。
「別にいいだろう。俺たちが婚約したのは事実だ」
「侑斗さんっ」
よく通る声でそう言って胸を張る侑斗を梨乃は慌てて止めるがすでに遅く、侑斗の声はロビーに響きわたっていた。