溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~


「梨乃がお昼を食堂で食べるって珍しいね。体調でも悪い?」
「ううん。ちょっと今日は寝坊しちゃって」

梨乃はごまかすように小さく笑い、空いていた丸テーブルにトレーを置き席に着いた。
普段は部署の片隅で持参したお弁当を食べるのだが、明け方近くまで侑斗に求められた体にお弁当を作る余力は残っていなかった。
おまけに今朝は侑斗から村野との関わりについて聞かされ時間もなかった。
昼休みになりまだ重い体で食堂に来た今も、声は変わらずかすれている。

「声がおかしいね。このところ気温も下がってるから気をつけなきゃ」
 
梨乃の隣に腰をおろした千紗が心配そうに眉を寄せたが、なにか気づいたように目を見開き梨乃に体を寄せた。

「もしかして、侑斗さん? あの御曹司に昨夜寝かせてもらえなかったとか」

小声で尋ねる千紗に、梨乃は顔を真っ赤にする。



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