溺愛は蜜夜に始まる～御曹司と仮初め情欲婚～

「ち、違うよ。少しは眠ったし侑斗さんは私より早く起きて朝食の用意をしてくれていて……」

梨乃は視線をそらし目の前のオムライスを口にした。

「あの御曹司が朝食の用意？　なになに、洋食？それとも和食？」

千紗が興味津々と言った顔で梨乃に突っ込んでくる。

「……チーズトーストとサラダ。あとコーヒーも淹れてくれた」
「へえ。そうなんだ。一緒に暮らしてるって聞いたときは信じられなかったけど、うまくやってるんだね。でも、この先梨乃が苦労しそうで心配だなあ。白石家の御曹司なんてたまにごちそうしてもらう程度の距離感が一番ラクなのに」

侑斗との同居どころか付き合い自体に反対している千紗は、渋々と言った様子でため息をついた。

「誰と一緒にいても苦労がゼロってわけじゃないから大丈夫。早く食べないとさめちゃうよ」
「……梨乃がいいならもうなにも言わないけどね。あ、このオムライスおいしい」
「うん」

梨乃は侑斗もオムライスが好きだったと思い出した。
次の週末の昼食にでもまた作ろうと思いながら食事を続けていると。

「村野さん、今日も来てるけど侑斗さんのことを絶対気に入ってるよね」