溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
今夜は村野の計らいで沢渡大臣の長男、恭介との会食の場が設けられたのだ。
場所は政財界の要人御用達の料亭で、もちろん村野も同席。

「今夜は懐石料理でしたよね。おいしかったですか?」

明るく尋ねるが、ほんとのところ村野のことが気になって仕方がない。
無意識に視線を泳がせた梨乃の頭を侑斗は軽くポンと叩いた。

「料理も酒も文句なくおいしかった。白石家の集まりでもよく使う料亭だから、近いうちに梨乃も一緒に行こう。俺が婚約したと聞いた女将が是非梨乃に会いたいって言ってたし。ああ、なんなら両家の顔合わせもそこでしてもいいな」
「それは、まだちょっと早いような……」

それまでどんより考えていた村野のことが一気に吹き飛んでしまった。
政財界の方々御用達の料亭に侑斗が出入りしていると聞き驚いたが、当然と言えば当然で……それはどうにか納得できてもまさか両家の顔合わせの話が出てくるとは予想外すぎて言葉を詰まらせた。
両親にはまだなにも話していないのだ。
楽観的でおおらかな両親が反対するとは思わないが、やはり梨乃の相手があの白石家の御曹司となれば心配もするだろう。
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