溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
梨乃は侑斗が手にしているショップバッグをちらりと見ながら声を弾ませた。

「彩実さんの親戚から送られてきたワインも開けよう」

梨乃はぴくりと眉を動かし、侑斗を見上げた。

「……それって、フランス国内でもなかなか手に入らない貴重な銘柄だったりします?」

「ん? マリュス家が所有するワイナリーで作られてるから、まあそうだろうな」

あっさりと答える侑斗に、梨乃は黙り込んだ。
侑斗の自宅にあるワインセラーには、いわゆるビンテージワインがたくさん入っている。
以前ワインのフェアを企画したときに勉強した梨乃は、ラベルを見ながらその品ぞろえの素晴らしさにぶるぶる震えた。
とくに彩実の親戚から定期的に届くというワインの価値は群を抜いていて、目眩を感じたほどだ。

「高価なワインと絶品のチョコレート……こんな非現実的な状況にいるなんて、信じられない」

梨乃が隣を歩く侑斗を無意識に見上げると、それに応えるような視線にぶつかった。
整いすぎた顔を向けられるたび、鼓動が高鳴る。
初めての恋愛はあまりにも極上で、まるでおとぎ話の中にいるようだ。

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