溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「侑斗さんの言葉はごもっともなんですけど。それに、さすがにこんなことになってしまったから、これからは気をつけなきゃと身に染みてます」

梨乃はまだ体に力が入らないながらもどうにか笑顔を作り、侑斗を安心させるようにそう言ったが、侑斗は納得するどころか眉間のしわをさらに深めた。

「身に染みたなら即引っ越しだ」
「えっ。あの、だからそれは我が家の経済状況ではちょっと無理――」
「経済状況よりも命のほうが大切に決まってるだろう」

侑斗の鋭い声が病室に響いた。

「ゆ、侑斗さんっ、声が」

あまりの大きな声に、梨乃は慌てて周りを見回すが、よく見ればここは個室で、梨乃以外に誰も患者がいないどころかソファーや大きなテレビが備え付けられている。
全体を木目調で整えられた特別室とでもいうべき部屋だった。

「ど、どうしてこんな部屋に。あの、私、相部屋で十分で……こんな高そうな個室はちょっと」

いったいいくらかかるのだろうと梨乃は顔をしかめた。

「俺がこの部屋にしてほしいって頼んだ」
 
侑斗が予想外の言葉を口にした。

「この病院、親戚が院長をしてるんだ。だからなにも心配するな」
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