溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
その意見には梨乃も賛成で、フェアの会場となるレストランの内装を一部変更し、男性でも足を踏み入れやすい落ち着いたものにしようと考えている。
食器も洋食器ではなく和食器を使い、味覚も視覚もシックにまとめるつもりだ。

「じゃあ、来週の打ち合わせまでに、今折原さんが提案してくれた男性にも受け入れられるスイーツの具体案、大丈夫か?」
「大丈夫です。レストランの料理長とパティシエたちにもアイデアをうかがってみます」

梨乃は木下に答えながら手元の資料をかたづけた。

「すみません。そろそろ来客があるので、今日はここで終わらせてください。あ、小野君早めに議事録作って回してね。企画の経過はのちのち役立つから正確に」

席を立ちながら、梨乃は隣の小野に声をかけた。

「わかってますよ。そんな何度も同じことばかり言わないでくださいよ。俺ってまるで出来の悪い弟みたいじゃないですか」

拗ねた口ぶりで目を細める小野に、梨乃は小さく笑った。

「弟ならできのいい男前がいるから間に合ってる。じゃあ、よろしくね」
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