強引な無気力男子と女王子

私の素がバレそうです

 「ハァァ‥‥‥」
 重い溜め息をつく。
 化学が終わってやっとお昼ごはんにありつけると思ったときに、担任の米村先生に資料を取ってくるのを頼まれたのだ。
 断れば良かったのにだって?
 外面の良さが邪魔したんだよ!
 畜生!
 イライラしながら資料室まで歩く。

 勢いよくガラッとドアを開けると、勢いが良すぎたのか、バンッと大きな音がなった。
 ヤッバ‥‥‥!
 キョロキョロと首を左右に動かして、誰もいないことを確認する。
 幸い、お昼ごはんの時間なので、資料室の周りには誰もいなく、今の音に気づくのは誰もいなかったようだ。
 フゥッと溜め息をつく。
 良かった‥‥‥。
 見られたのが女子ならば上手く誤魔化すことができるが、男子ならばそうは行かない。
 瞬く間に学校中に私の本性がバレることだってあるのだ。
 本当に良かった。
 資料室の中に足を踏み入れる。
 「んぅ‥‥‥」
 誰!?
 突然誰かのうめく声が聞こえて、私の肩がビクッと跳ねる。
 「何今の音‥‥‥?」
 聞かれた!?
 もう一度周りをキョロキョロ見回すが、やはり誰の姿も見えない。
 「聞き間違いか」
 ボソッとつぶやき、目当ての資料を探す。
 「ねぇ」
 「っ‥‥‥!!!」
 また後ろで声が聞こえた。
 絶対聞き間違いなんかじゃない。
 バッと振り向くとそこには予想外の人物が立っていた。
 「瀬戸悠理っ‥‥‥!?なんでここにいんだよっ‥‥‥?」
 瀬戸悠理は少し首を傾げてんー、と言うと
 「寝てた」
 とあっけらかんと言った。
 「寝てた?ここで?マジで?」
 返事が意外で、つい聞き返してしまう。
 「真紘こそこんなとこで何してんの」
 瀬戸悠理は私の質問には答えず、逆に質問してきた。
 ‥‥‥いきなり名前呼びですか。
 まあ私は男の知り合い、よくて友人ぐらいに見られているのだろう。
 別にそれでもいいけど。
 「先生に言われて資料取りに来てんの」
 「ふーん」
 大して興味も無さそうな返事をする瀬戸悠理。
 興味がないなら最初から聞くなっつーの!
 「なんで寝てたの」
 素朴な疑問を口にする。
 「教室だと静かに寝れない」
 あーそうですか。
 人気者は大変ですね。
 こんな奴ほっとこ。
 
 「何してるの?」
 「うるっさいな!ほっといてよ!」
 「いや届いてないじゃん‥‥‥」
 私結構背が高い方だと思ってたんだけどなあ‥‥‥。
 一番上の段にある資料にどうしても手が届かない。
 どうしよう‥‥‥。
 「ほい」
 「え?あ‥‥‥」
 見ると、私の手の中にはファイルがきちんと収まっていた。
 「あ、ありがとう」
 「どーいたしまして」
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