強引な無気力男子と女王子
 「あ」
「どうしたの日葵」
何かを思い出したような、思いついたような短い言葉で笑いを止めた日葵に問う。
 「あのさ、真紘に付き合って欲しいんだけど」
「は!?」
突然すぎる日葵の言葉に、思わず驚きの声が出る。
 「ごめん、どういう事?は?ちょい待ち、え?」
「わー!ごめんそういう事じゃなくて!付き合って欲しい場所があるって事!」
「‥‥‥‥‥‥ハァァァア。びっくりした!それ今の流れで言わないでよ‥‥‥」
変に驚かすなよ‥‥‥。
 ただでさえ今神経質になってんだから。
 「ごめんごめん。いやー大変ですなあ“女王子”は。私もなってみたいですなあ一回はそんなふうに」
 「からかわないでよ。ってか誰だよ女王子っていうあだ名付けたの‥‥‥」
「誰だろうねー。でもよくできたニックネームだよね〜。王子みたいな女で女王子!」
「話ずれてるし、これ以上からかうならその付き合って欲しい場所にも行かないけど」
 そこまで言うと、さっき口に入れたコーラ味の飴がなくなってることに気づく。
 ガサガサと飴の袋に手を突っ込み、次はラムネ味の飴を取り出す。
 「あ、そうだった。あのね、写真展に一緒に行きたいの!」
「写真展?」
やだよ、わざわざ写真展に放課後足を向ける程暇じゃないし、私も。
 ‥‥‥暇だけど。
 「放課後暇でしょ?」
全てを見透かしたような日葵の発言に一瞬びくっとなる。
 日葵は何気に鋭いんだよな‥‥‥。
 これで放課後忙しいという言い訳は出来なくなった訳だ。
 じゃあ次はどんな言い訳をしようか。
 写真アレルギーとでも言おうか。
 ‥‥‥さすがに嘘だと気づくか。
 「写真展て誰の?」
諦めて、日葵に問いかける。 
「Reoの」
 Reo?
 誰だそれ?
 「まさか知らないとか言わないよね?顔はそんな顔だけど」
 「知らないって言ったらダメなわけ?」
そこまで言うと、日葵は心底びっくりしたような、信じられないとでもいう顔でこちらを見てくる。
 「ほんとのほんとに知らないの!?」
 「うん」
 そんなに有名なの、その人。
 「どんな人なの?」
「今女子高生に人気な写真家だよ!」
写真家は女子高生にモテるのか?
 「Reo自身は顔出ししてないんだけど、Reoが撮るモデルがすっごくすっごくイケメンなの!だから、Reo自身がモテるって言うより、そのモデルがモテるって言った方が正しいかも。でもきっとReoもイケメンだっていう説が今ファンの中で一番有力だよ!わかった!?」
「は、はい‥‥‥」
普段はのほほんとしてる日葵がすごく早口で喋ることに対する驚きが半分、日葵の迫力に気圧されたのが半分で返事をする。
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