強引な無気力男子と女王子

ドキドキたこ焼きパーティー

 「誰!?たこ焼きに梅干しいれたの!?」
 私がそう言って立ち上がると殆どの面々が笑う。
 ‥‥‥悠理と千晴くんは笑わない。
 私が女だって判明してから、千晴くんはなんだか全く私と話してくれなくなった。
 何か嫌われるようなことしたのかな‥‥‥?
 凹んでしまう。
 ううん、だって今は歓迎会なんだから、暗い気持ちになるな自分!
 無理矢理暗い考えを頭から追い出す。
 「俺だよ梅干しいれたの」
 そう言って龍羽が名乗りをあげる。
 「龍羽〜〜〜‥‥‥!」
 私は恨めしそうに龍羽を睨む。
 私の歓迎会はたこ焼きパーティーだったのだけど。
 何故かたこが一つも入ってない、代わりに色々とたこ焼きにするにはやばい具が入っている。
 「アッハッハ。まあ、一よりマシでしょ」
 そう言って笑うのはお酒が入って少し陽気になった連音さん。
 そう言われてチラッと一さんのほうを見る。
 そう、さっき一さんは‥‥‥私よりひどいわさび入りのたこ焼きに当たったのだ。
 「‥‥‥口の中がまだ焼けているみたいだ」
 そう言って一さんはたこ焼きには手を出さずにずっと水を飲んでいる。
 「まあ、わさび入れたのは一自身なんだけどねー」
 棗さんが自業自得、とでも言う風に告げ、自分も焼きたてのたこ焼きに手を伸ばしては「あ、これこんにゃく入ってるー。意外と食感がたこに似てるかもー」と呟いている。
 香くんは「僕が焼くからには、一つも焦がさない!」と張り切って、たこ焼きを取ろうとする千晴くんや龍羽に「まだ、まだ最高のタイミングじゃない!」と言っている。
 なんだか職人さんみたい。
 悠理は、というと‥‥‥。
 「ねぇ悠理」
 「ん?」
 「何してんの」
 悠理は私の肩に頭を置いて、寝ている。
 「良い高さ」
 それは良かった。
 じゃなくて!
 心の中で自分に突っ込む。
 「今、たこ焼きパーティーだよ?」
 「それが?」
 「なんで食べないの」
 本当に謎。
 寝るより食べなよ。
 というかみんな見てるし。
 いや、見てなかったらしていいという訳じゃないけど。
 「食べさせてよ」
 「は?自分で食べなよ」
 「嫌だよ」
 そう言って悠理は口を開ける。
 「なんだよ悠理、俺があーんしてやろうか?」
 「龍羽じゃ意味がない」
 せっかくの龍羽の提案も意味不明な理由で拒否する。
 「私、悠理のせいで食べにくいんだけど」
 「あーんしてくれたらやめてあげる」
 
 
< 29 / 107 >

この作品をシェア

pagetop