強引な無気力男子と女王子
 ガラガラと会議室のドアを開けて歩夢くんと中に入ると、先生の他に先客が二人いた。
 女の子のほうはスマホを触っていて、男子のほうは机に突っ伏して寝ている。
 「クラスと名前を言ってください」
 「1年B組の柳井真紘です」
 「・・・姫野歩夢です」
 「1年B組の席はあそこです」
 「わかりました」
 女の先生に指示された場所は、先客の隣の席だった。
 素直に座る。
 パイプ椅子に座っていると、隣の男子が寝たまま顔の向きをこっちにした。
 顔が見えて私は思わず驚いてしまう。
 「悠理!?」
 「ん-・・・。真紘・・・?」
 薄っすら目を開けて悠理は私の顔を確認する。
 「ああ、やっぱり真紘だ・・・」
 「え、悠理って実行委員に立候補したの?」
 「無理矢理入れられた」
 「ああ、やっぱり・・・」
 おそらく、ペアの女子が強引に悠理を推薦したんだろう。
 その光景が想像できる。
 「C組は何をやるの・・・」
 「何話してるのぉ?」
 悠理への質問は悠理の隣に座っていた女の子の高い声にかき消されてしまった。
 この声は・・・。
 「百華も話にまぜてくれるぅ?」
 「奥江さん・・・・・・」
 気づかれない程度に顔をしかめる。
 正直、私は奥江さんが苦手だ。
 合宿の一件から。
 「B組は何をするのぉ?」
 「あー、えっと、男女逆転コスプレ喫茶だよ」
 悠理の頭上で会話が繰り広げられる。
 作ったような可愛いけど甘すぎる奥江さんの声で問われた質問に、一応答える。
 私の返答を聞いて、奥江さんはクスッと笑う。
 何・・・?
 「へぇ!男女逆転なんて真紘くんにはぴったりだね!❛❛男みたいな女子❜❜の真紘くんには!」
 『男みたいな女子』の部分をやけに強調して、奥江さんは言った。
 奥江さんは笑顔だけど、目は笑っていない。
 反射的に眉毛がピクリと動いてしまう。
 そんな私に追い打ちをかけるように、奥江さんは更に「どうしたらそんなに男っぽく出来るのぉ?百華、外で遊んでるとよくお兄さんたちに声かけられちゃって、困ってるの。どうしてるの?あ、もともと男っぽいから聞いてもわかんないか。ごめんねぇ、変なこと聞いちゃって」と意地の悪い笑顔で続けた。
 感じワル・・・。
 我慢だ、我慢。
 王子様の笑みを貼り付けて、乾いた声で「あはは」と笑い返しておいた。
 「ねぇ、悠理ぃ」
 「何?」
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