強引な無気力男子と女王子
 嫌なことも言われたけど、それも悠理が好きだからなんだよね・・・。
 もちろん『悠理を頂戴』とか言われても渡す気はさらさらないんだけど。
 でも、奥江さんの気持ちもわかる気がする。
 なんて言ったらいいのかわからなくてうつむいたとき、隣でずっと黙ってた歩夢くんがチョイチョイ、と私の制服の袖を引っ張った。
 「・・・柳井さん」
 「どうしたの?歩夢くん」
 急に声をかけられたものだから少し動揺してしまう。
 何気に私、歩夢くんの顔初めて見るかも。
 ずっと下を向いてて、顔が見えなかったからね・・・。
 歩夢くんは漫画に出てくるような分厚い眼鏡をかけて、その上前髪が長いから素顔は結局見えない。
 本当に漫画に出てくるキャラクターみたいだ。
 「そのさっきのって・・・本当なの?瀬戸くんと、付き合ってるって」
 「・・・本当だよ」
 奥江さんと同じ質問をしたかと思うとまた歩夢くんは下を向いてしまった。
 ・・・不思議な子だ。
 「それでは、顔合わせをしていきたいと思います」
 女の先生の声にハッと前を向く。
 どうやら、話している間に全クラスの実行委員が集まったようだった。

 顔合わせはつつがなく終わり。
 私は悠理と通学路を歩いていた。
 「しばらくいけなくなるかな、撮影」
 「・・・・・・」
 「また後で連音さんに連絡しなくちゃ」
 相変わらず悠理は眠たそうで、私の話をちゃんと聞いているのかすら怪しい。
 実質一人で喋ってるみたいだ。
 「C組は縁日やるんだね」
 「うん」
 「時間があったら行くから」
 「待ってる」
 お、返事が返ってきた。
 顔合わせといっても、各クラスやることを発表して、被ったらじゃんけんして行うクラスを決める、みたいなものだった。
 負けた人はまたクラスで何を出すか決めるらしい。
 B組のコスプレ喫茶はどことも被っておらず、C組の縁日は奥江さんがじゃんけんして見事勝利していた。
 「縁日ってことは、悠理も浴衣着たりするの?」
 「うん。見たいの?」
 「それは、まぁ・・・」
 「ちゃんと言ってくれないと分かんない」
 「・・・見たい、です」
 「良く出来ました」
 ・・・なんだか、いつまでたっても悠理には勝てない気がする。
 悔しい。
 「じゃあ、私こっちだから。バイバイ、悠理」
 いつの間にか、別れ道まで来ていたみたい。
 悠理に手を振るけど、悠理から返事が返ってこない。
 
< 79 / 107 >

この作品をシェア

pagetop