強引な無気力男子と女王子
 「ここらへんでいいかな」
 私はあまり人通りのない廊下まで来ると足を止めた。
 「あの、柳井さん・・・?集まりって・・・?」
 「もちろん嘘に決まってるじゃん」
 「え」
 まさか嘘とは思わなかったのか、歩夢くんは目を丸くしている。
 委員会の集まりなんてでっち上げ。
 多分、これが一番女子たちを納得させて歩夢くんを連れ出す方法だったから。
 「コンタクトにしたんだね」
 「はい!・・・変じゃないですか?」
 「ううん、とっても可愛いよ」
 「・・・・・・」
 私がそう言うと歩夢くんは俯いてしまった。
 「歩夢くん?」
 「・・・あの、その」
 「?」
 何かを言いかけて口を閉じてを歩夢くんは繰り返している。
 「・・・柳井さんも、その、カッコいい、です・・・」
 顔を上げて歩夢くんがそう言った。
 心なしか、歩夢くんの顔は赤い。
 「え!あ~・・・そういえば私も仮装してるんだった・・・」
 只今、私は王子様のコスプレをしている。
 頭にキラキラの王冠まで乗せて。
 王冠乗せてるから、王子様っていうより王様だよね。
 他にも私は今日、吸血鬼・執事・特攻服・軍服の四つのコスプレをする予定らしい。
 日葵に聞いた話だけど、私の衣装が多くて予算内には収まらないで女子たちが個人的にお金を工面したらしい。
 女子も物好きだよね。
 「あの、柳井さん」
 「ん?」
 「さっき、助けてくれてありがとうございました」
 「ああ、気にしなくていいよ。なんなら悠理にも同じことやったことあるし」
 「・・・瀬戸さんに?」
 悠理の名前を出したら、歩夢くんの顔が少しだけ曇った。
 「同じことって・・・」
 「悠理もね、女の先輩たちに囲まれて大変そうにしていたから。だから私が注意を引き付けて悠理を逃がしたことだってあるんだ~」
 「そうなんですか・・・」
 「?」
 歩夢くんが黙って、また俯く。
 私も歩夢くんが喋らなくなった原因がわからずになんて話したらいいのかわからなくて黙る。
 「・・・瀬戸さんと、柳井さんは仲がいいんですね」
 「え?」
 ふいに、歩夢くんのボソッとした言葉が耳に届いた。
 「確か、付き合ってるんですよね?なら、仲が良くてもおかしくないですよね」
 歩夢くんは、いつもより早口だ。
 「あ、歩夢くん?どうしたの?」
 「・・・柳井さん、実は僕」
 歩夢くんが何かを決心したように顔を上げたとき。
 「「「キャー――――!!!!!」」」
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