強引な無気力男子と女王子
 「「!?」」
 大きな歓声が小さな歩夢くんの声をかき消した。
 「見て!王子様姿の真紘くんよ!」
 「こっちこっち!早く!」
 「カッコいい・・・」
 「凄い、レア姿だわ!」
 どうやら、女子軍団に見つかってしまったらしい。
 女子が女子を呼んで、更に騒ぎが大きくなる。
 教室にいればよかった・・・。
 まさか、よりによってこのタイミングで女子の軍団がこの廊下を通るなんて。
 本当についてない。
 「歩夢くん、いったん教室に戻ろう」
 「はい!」
 私たちは女の子達から逃げるように、さっき通ってきた道を引き返した。
 そういえば歩夢くんさっき何か言いかけてたけど、何だったんだろう?

 「お兄さん!ねえこっちのテーブルきて!」
 「ここのクラス当たりだわ」
 「一緒に写真撮ろうよ!」
 文化祭もいよいよ開始。
 一般公開が始まり、一般のお客さんも校内にはたくさんいるらしい。
 私は今、接客にいそしんでいる。
 今、というかずっと。
 「ねえ日葵!私のシフトおかしくない!?」
 「え?真紘ったら今気づいたの~?」
 ちょうど同じ時間のシフトに入っていた日葵に小声で質問する。
 この学校の文化祭は二日間かけて行われる。
 両日、午前の9時半から2時まで、文化祭は開かれる。
 他の人のシフトを見る限り、最低二2時間半は自由時間があったはずなのに。
 「なんで私は自由時間が1時間半しかないの!?」
 事前にシフト確認してなかった私ももちろん悪いけどね!?
 いくらなんでもおかしいでしょ!
 「真紘がいたほうがお客さんが来るからでしょ」
 冷静な日葵の指摘。
 「それに、単にコスプレが多いんだから必然的にシフトの時間だって長くなるんじゃないの?真紘今2着目じゃん」
 私が今着ているのは吸血鬼の衣装。
 「吸血鬼さ~ん!こっち来てよ~!」「私の血、吸っても良いよ~!笑」なんていう一般客の叫びに「はい、すぐ」と笑顔で対応する。
 まあ、要するに客寄せパンダってことだね・・・。
 ははは・・・と半分諦めの意味も含んだ笑いを浮かべた時。
 「え・・・嘘」
 「本物?」
 「どうして来てるの?」
 急に、教室の入り口が騒がしくなり始めた。
 不思議に思って、入口に近づいた。
 「え・・・!?」
 「よー、久しぶりだな!」
 「おひさー」
 「すごいはやってるね」
 どういうわけか、教室の前に龍羽、棗さん、連音さんの3人が立っていた。
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