ONLY YOU~過ちの授かり婚~
『帝和銀行』本店ビルディングは地下鉄大手町駅に直結していた。
地上三十階地下四階建ての全面硝子張りのビル。
帝和ファイナンシャルグループの傘下に属し、主要親密企業には大企業の名前が連なる。
ドバイ支店は日本の銀行で初めて、イスラム金融業務が解禁となった。


今の俺はその頂点に立ち、最上階の頭取室に居た。
黒壇の重厚なプレジデントデスク。
一端の銀行マンだった俺が父と伊集院敦司総理のおかげで、今は最年少にして頭取職に就いていた。
年功序列、上下関係の厳しい銀行業界では異例のコトだった。金融界も世間も大いに注目した。


俺に全く興味を示さなかった人間が向こうから尻尾を振ってやって来る。

でも、そんな輩が見ているのは俺の力ではなく、伊集院家の力。

連中は俺に何を乞うのうだろうか?

人なんて死ねば、権力なんて何の力もないのに。

俺に群がる連中を冷たい眼差して見ていた…それは女も同じ。

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