罰ゲームから始まる恋
―やっとお昼だ。
午前中は何事もなく、過ごせてよかった…。
ホッとしながら、持ってきたお弁当を取り出した。
中を開ければ、コロッケとチーズ入りの卵焼き、たこさんウインナー、マカロニサラダが入っていた。
いつも購買は混むのでお弁当を作って持ってきている。
今日も母親に弁当を渡すと子供のようにはしゃいでいた。
お弁当はお母さんの好きなコロッケを入れた。
きっと喜んでくれるだろう。そう思いながら、箸を持ってお弁当を食べようとするが、
「あら、あんたは今日もお弁当?貧乏くさいわねえ。」
その時、机を囲むようにしていじめっ子の三人組が現れた。
思わず、肩が強張ってしまう。
葛西蓮歌、石井千賀子、野辺美里…。
いつも自分に執拗ないじめをする彼女達は同じクラスメートだ。
今時の女子高生らしく、明るく染められた茶色の巻き毛にばっちりと化粧された長い睫毛や唇に塗った艶々したグロスも綺麗に整えられた爪も強い香水の匂いも彼女達にはよく似合い、上から下までばっちりと決まっている。
リップかハンドクリーム位しかつけない野暮ったい地味な自分とは大違いだ。
性格はともかく、外見はとても美人だ。
「何、これ?茶色ばっかりで地味な弁当ー。」
厭味ったらしく馬鹿にしたようにして笑われ、恥ずかしさでかあ、と頬を赤くした。
「あざとーい。男受け狙っているの?」
「家庭的で女らしさアピール?受けるー。」
「どうせ、親に作ってもらっただけの癖に。必死すぎ。」
ギュッとスカートの裾を握りしめる。
好き放題言いたいことを言えばそれに飽きた彼女達はいつもその場を立ち去ってくれる。だから、少しの間我慢すればいいだけだ。そう思って耐えていると、
「ちょっと聞いているの?もしもーし?」
蓮歌にガッと肩を掴まれる。爪が食い込んで痛い。
「っ…、」
痛みに思わず顔を顰めるがキュッと唇を噛んで声は出さなかった。すると、
「無視してんじゃねえよ!このブス!」
ガシャン、と机を蹴られ、ガターン!と音を立てて机が倒れた。
その反動で机の上に置いていた弁当も床に落とされた。
大きい音と衝撃に梢はビクッと身体を震わせた。
「不味そうな弁当…。こんな物…!」
「あっ…!」
忌々しそうにぶち捲けられた弁当の中身を見下ろし、美里が弁当のおかずを踏みつけた。思わず椅子から立ち上がった。
千賀子はくすくすとおかしそうに笑っている。
無惨に踏みつけられたお弁当を見て、絶句していると、ドンッ!と蓮歌に突き飛ばされた。不意打ちの攻撃に抗えず床に尻餅をついてしまう。
「痛ッ…、」
身体を強く床に打ちつけてしまい、打った所が痛い。
座り込んだまま見上げると蓮歌たちが口元を歪ませて笑っていた。
「いい気味。」
「蓮歌―。そろそろ、行こうよ。休み時間が短くなっちゃう。」
「それもそうね。…あ。分かってると思うけど…、ちゃんとそのゴミ、片付けておいてね。」
そう言い捨てるとキャハハハ!とおかしそうに笑い、蓮歌たちは教室を出て行った。
―片付け…、ないと。
痛む身体を引きずりながらお弁当の箱を拾った。教室には蓮歌たちだけではない。
他にもクラスメートの生徒は複数いる。
が、クラスメートは誰も助けようとはしない。皆が遠巻きに見て見ぬ振りをしている。
あたしを庇ったら、次に虐められるのは自分ではないかと恐れているからだ。
…分かっている。誰も助けて何てくれない。誰だって、自分が一番可愛い。
あたしだって同じ立場だったらきっと、見て見ない振りをする。
運が悪いことに自分は蓮歌たちに目を付けられ、いじめのターゲットにされた。
それだけの話だ。頭では分かっていても心がくじけそうになる。
―泣くな。ここで泣いたら、駄目…。
懸命に涙を堪え、その場を片付け、よろよろとおぼつかない足取りで教室を出て行った。
そんな自分をある男子生徒がじっと見つめていることに全く気付かなかった。
午前中は何事もなく、過ごせてよかった…。
ホッとしながら、持ってきたお弁当を取り出した。
中を開ければ、コロッケとチーズ入りの卵焼き、たこさんウインナー、マカロニサラダが入っていた。
いつも購買は混むのでお弁当を作って持ってきている。
今日も母親に弁当を渡すと子供のようにはしゃいでいた。
お弁当はお母さんの好きなコロッケを入れた。
きっと喜んでくれるだろう。そう思いながら、箸を持ってお弁当を食べようとするが、
「あら、あんたは今日もお弁当?貧乏くさいわねえ。」
その時、机を囲むようにしていじめっ子の三人組が現れた。
思わず、肩が強張ってしまう。
葛西蓮歌、石井千賀子、野辺美里…。
いつも自分に執拗ないじめをする彼女達は同じクラスメートだ。
今時の女子高生らしく、明るく染められた茶色の巻き毛にばっちりと化粧された長い睫毛や唇に塗った艶々したグロスも綺麗に整えられた爪も強い香水の匂いも彼女達にはよく似合い、上から下までばっちりと決まっている。
リップかハンドクリーム位しかつけない野暮ったい地味な自分とは大違いだ。
性格はともかく、外見はとても美人だ。
「何、これ?茶色ばっかりで地味な弁当ー。」
厭味ったらしく馬鹿にしたようにして笑われ、恥ずかしさでかあ、と頬を赤くした。
「あざとーい。男受け狙っているの?」
「家庭的で女らしさアピール?受けるー。」
「どうせ、親に作ってもらっただけの癖に。必死すぎ。」
ギュッとスカートの裾を握りしめる。
好き放題言いたいことを言えばそれに飽きた彼女達はいつもその場を立ち去ってくれる。だから、少しの間我慢すればいいだけだ。そう思って耐えていると、
「ちょっと聞いているの?もしもーし?」
蓮歌にガッと肩を掴まれる。爪が食い込んで痛い。
「っ…、」
痛みに思わず顔を顰めるがキュッと唇を噛んで声は出さなかった。すると、
「無視してんじゃねえよ!このブス!」
ガシャン、と机を蹴られ、ガターン!と音を立てて机が倒れた。
その反動で机の上に置いていた弁当も床に落とされた。
大きい音と衝撃に梢はビクッと身体を震わせた。
「不味そうな弁当…。こんな物…!」
「あっ…!」
忌々しそうにぶち捲けられた弁当の中身を見下ろし、美里が弁当のおかずを踏みつけた。思わず椅子から立ち上がった。
千賀子はくすくすとおかしそうに笑っている。
無惨に踏みつけられたお弁当を見て、絶句していると、ドンッ!と蓮歌に突き飛ばされた。不意打ちの攻撃に抗えず床に尻餅をついてしまう。
「痛ッ…、」
身体を強く床に打ちつけてしまい、打った所が痛い。
座り込んだまま見上げると蓮歌たちが口元を歪ませて笑っていた。
「いい気味。」
「蓮歌―。そろそろ、行こうよ。休み時間が短くなっちゃう。」
「それもそうね。…あ。分かってると思うけど…、ちゃんとそのゴミ、片付けておいてね。」
そう言い捨てるとキャハハハ!とおかしそうに笑い、蓮歌たちは教室を出て行った。
―片付け…、ないと。
痛む身体を引きずりながらお弁当の箱を拾った。教室には蓮歌たちだけではない。
他にもクラスメートの生徒は複数いる。
が、クラスメートは誰も助けようとはしない。皆が遠巻きに見て見ぬ振りをしている。
あたしを庇ったら、次に虐められるのは自分ではないかと恐れているからだ。
…分かっている。誰も助けて何てくれない。誰だって、自分が一番可愛い。
あたしだって同じ立場だったらきっと、見て見ない振りをする。
運が悪いことに自分は蓮歌たちに目を付けられ、いじめのターゲットにされた。
それだけの話だ。頭では分かっていても心がくじけそうになる。
―泣くな。ここで泣いたら、駄目…。
懸命に涙を堪え、その場を片付け、よろよろとおぼつかない足取りで教室を出て行った。
そんな自分をある男子生徒がじっと見つめていることに全く気付かなかった。